
水車、川の洗濯、伝統的な暮らし
城や教会、歴史的建造物、ローカルマーケットにレストラン、、、ルーマニア旅の楽しみはたくさんありますが、ここでは少し変わったアクティビティをご紹介します。というのも、ルーマニアには現在でも昔ながらの暮らしを垣間見れる場所が点在しており、そんな場所を訪れることもまた貴重な旅の体験になることでしょう。森深い谷を流れる澄んだ小川のほとりで、まるで古の風習そのままの方法で洗濯をする人々―木製の水車の音、羊毛がそよ風に乾く匂い、手作りワインを仲間と酌み交わす幸福…そんな体験を求めて、ルーマニアの田舎へ足を踏み入れてみませんか?
以下は、歴史と郷愁が溢れる「体験スポット」。その土地の暮らしをそっとのぞきに行く感覚で、ご覧ください。
- 1.マラムレシュ地方の「ヴァルトリ」(Văltori)
- 2.ルダリア水車群 エフティミエ・ムルグ(Eftimie Murgu)
- 3. ヴィスクリ村(Viscri) — ユネスコの時間に触れる
- 4. 「絵のような村」Ciocănești で暮らすように過ごす
- まとめ
1.マラムレシュ地方の「ヴァルトリ」(Văltori)
「ヴァルトリ」とは、自然の水の流れを利用した渦巻き洗い場のこと。特にルーマニア北西部、ウクライナとの国境近くのマラムレシュ地方において、羊毛加工用の伝統的な水力機械として用いられてきました。バドゥ イゼイ(Vadu Izei)やスルビ(Sârbi)などの村では、ウールの敷物などの厚手の布地を洗うために使用される伝統的な木製の渦巻き型洗濯機の見学が可能です。これらの独創的な装置は現在でも稼働しており、多くの場合コミュニティによって保守されています。
<旅のポイント>
マラムレシュ地方は、ルーマニアの中でも特に豊かな自然の中で育まれる伝統的な生活様式が現在も保存されていることで有名なエリアです。高い尖塔と彫刻が施された門が目印の木造教会は、世界遺産にも登録されています。豊かな自然と生きる羊飼い、街をいく馬車、干し草の山、、、山岳地帯の昔ながらの風景は、ルーマニアの人々の誇り。宿泊には、古い習慣と現代的な快適さが融合した、復元された伝統的なコテージに滞在できるのも魅力です。
伝統的な木造教会群(UNESCO世界遺産)

17~18世紀建造の木造教会が保存されており、それぞれ独自の装飾が見どころです。伝統的な木造建築教会として世界遺産に登録されています。
カラフルな墓地「Merry Cemetery」

サパンツァ(Sapânța)村にある墓地(Cimitirul Vesel)は、明るい色調の墓石とユーモラスなエピタフ(墓碑銘)で知られています。
蒸気機関車「モカニツァ」(Mocănița)

ヴァーセル渓谷の森林地帯を走る細軌道の蒸気列車。森林の奥深くへと進む、ノスタルジックな旅が楽しめます。
2.ルダリア水車群 エフティミエ・ムルグ(Eftimie Murgu)
カラシュ・セヴェリン(Caraș-Severin)のルダリア川沿いに位置するこの地域には、南東ヨーロッパ最大級と称される、18世紀の水車群が現役で残存しています。22基の水車が今も稼働しており、伝統的な製粉技術を継承しているのです。
<旅のポイント>
村の祭りでは、伝統衣装や踊りを見ることができ、写真撮影にも絶好です。しばしばプロフェッショナルなダンス集団もいますし、状況によっては数Leiのお礼も喜ばれます。また、夏は音楽フェスも盛んなので、伝統と現代文化を同時に体験できます。
ビガルの滝(Bigăr Waterfall)

世界で最も美しい滝のひとつとしても知られる、ユニークな景観を誇る滝。水車群から車で短時間というアクセスの良さも魅力です。
ケイレ・ネレイ–ベウシュニツァ国立公園

切り立った峡谷や豊かな森林、滝などを満喫できる自然の宝庫で、ハイキングや写真撮影に最適です。水車群との自然体験をセットで楽しんでみては。
オラヴィツァ(Oravița)で街歩き

歴史ある街並みとルーマニアで最も古い鉄道駅があることで知られる街です。文化や歴史に触れながら、程よい町歩きを楽しみましょう。
3. ヴィスクリ村(Viscri) — ユネスコの時間に触れる
トランシルヴァニア地方、ドイツ系移民・サクソン人の村落ヴィスクリ。伝統的な建築様式と農法が今なお息づく村で、世界遺産に登録されています。イギリス王室、チャールズ国王が訪れる場所としても有名。深い歴史と手仕事、田園風景がどこまでも続き、「都会の喧騒を忘れる旅」にぴったりの場所で、持続可能な遺産観光のモデルとなっています。
<旅のポイント>
ヴィスクリは、ただ「観光地」として訪れる場所ではなく、自分の五感で「田舎の営み」を感じ取る場です。馬のひづめの音、夕方に帰る家畜、薪の煙、手仕事の指先。こうした小さな一瞬一瞬が旅の宝になります。いつもとは違う時間の流れを探しているなら、この村の澄んだ空気と静かな暮らしに心を開いてみてください。
要塞教会と博物館訪問

ユネスコ世界遺産に登録された要塞教会は村の外壁に守られ、歴史を感じる場所。教会隣の博物館で農具や聖具などの展示も。
馬車の旅・羊飼い体験

馬車で牧草地に行き、羊の搾乳や刈り入れの見学が可能です。5〜9月頃がベストシーズン。チーズの試食付きも人気。
地元工芸品づくり体験

地元住民による手編みの靴下や毛布、刺繍、黒鉄細工など。自分で製作できるワークショップがある宿もあり。
4. 「絵のような村」Ciocănești で暮らすように過ごす
ルーマニア北部、ブコヴィナ地方。山々と森林に囲まれ、川が通るこの土地には、春の訪れとともに色鮮やかな家が目を引き、伝統が静かに息づいています。チョカネシュティ(Ciocănești) はその中でも特に、壁画・卵の装飾・昔ながらの工芸・自然・人のあたたかさが溶け合って、「田舎の本当」を体験できる場所です。
<旅のポイント>
森や川、静かな道を歩きながら、都会では感じられない風や匂い、鳥の声が五感を磨くー。Ciocănești の魅力は、手の届く伝統と自然、そして「何もしないことの贅沢」があることです。どこかで立ち止まり、地元の人たちと話をすることで、人間と自然、伝統との関係がリアルに見えてきます。家の壁に描かれたモチーフを見て歩くと、ひとつひとつ家族の歴史や村人の愛着が感じ、卵をペイントする細かな技法や模様の意味を知ることで、その地域の文化・価値観に触れてみては。
卵の装飾博物館

卵の「ウンコンデイアテ(încondeiate)」技法を展示。非常に多くの作品があり、意味・モチーフを学べる。ワークショップがあることも。
民族博物館

婦人の衣装、木工道具、織物、鍛冶、山仕事など、村の昔の暮らしを見せる展示。暮らしの技術や道具に触れることで、過去と現在の繋がりを感じられる。
ラフティング体験

Bistrița Aurie 川での木の筏(プルタ)体験。昔、木材を筏で運ぶ仕事があったもの。観光客向けに短時間体験がアレンジされていることも。
まとめ
こういった田舎の都市や村で過ごす時間は、観光客に溢れるメインスポットとはまた違った旅の思い出が作れること間違いなしです。もし地方へ足を伸ばすことが難しい場合は、シビウ近郊にあるアストラ野外博物館もおすすめです。ヨーロッパ最大級の野外民俗博物館の一つで、ルーマニア各地から集められた300棟以上の伝統建築物(製粉所、工房、住居、公共建築など)を展示。産業革命以前の農村生活の臨場感あふれる情景を再現しています。旅のご都合に合わせて選んで足を運んでみてくださいね。
